電気の力が遠くまで作用する理由
太平洋側の冬季は乾燥しているので静電気に悩まされます。静電気で不快なのは家に入ろうとして金属製のドアノブに触れたときに受ける電撃と衣服や埃が吸着することだと思いますが、このページでは物が吸着することについて考えてみます。
下写真は、ポリエチレン製のレジ袋の端を乾いた指で擦ってからその指をレジ袋に近づけたものです。(2019年10月19日撮影)
上写真の左側の様にレジ袋の端に指を近づけて行くと、指とレジ袋が接触する前にレジ袋が動いて指に付きます。
この現象は、レジ袋を乾いた指で擦ったために生じた指表面のプラスの電気と、レジ袋表面のマイナスの電気が引き合う力によるのですが、なぜ引き合うのでしょうか?
電子と光子の関係
私たちが感じたり利用している電気はマイナスの電荷を帯びた電子の働きによっていますが、電子からは光子(素粒子)が出ています。光は光子が集まったものです。光子はポーズ粒子と言われ、ポーズ粒子は同一場所に多数存在出来るのが特徴です。電子はフェルミ粒子と言い、フェルミ粒子は同じ種類の粒子は同じ場所に複数存在出来ず、増減しません。
ポーズ粒子の光子は電子の周囲に存在し、電子が刺激されると幾らでも現れ、光子は質量が0なので何処まででも飛んで行きます。
たとえば、フィラメント(線状にした金属)を電気によって加熱して光を出す白熱電球では、熱エネルギーによって刺激を受けた電子が光子をたくさん出し、私たちは光として照明に使っていますが、フィラメントが切れるまで光を出し続けます。
LED電球は、電子が持っているエネルギーを捨てるときにそのエネルギーを光子として外部に出すことを利用しています。
光子は何処までも飛んで行きますが、光子は四方八方に飛ぶので遠くに行けば行くほど、単位面積を通過する光子の数は距離の二乗に反比例して減少します。また、その光子が通過できない遮蔽物があれば減衰します。
電気の力を伝えるのは光子
レジ袋の端を指で擦った話に戻すと、マイナスに帯電したレジ袋の表面からは電子から放出された光子が出ていて指の表面がその光子を取り込んだり、放出することによって引き合う力が生じます。
光子は質量が無いので何処までも伝わりますが、電球の説明で触れたように距離の二乗に反比例して単位面積当たりの光子の数が減ってしまうので、レジ袋の端と指の距離が離れていれば引き合う力が極弱くなってしまいます
光子が力を伝えるのは、原子核とその周りを回っている電子との間でも同じで、光子をやりとりして求心力を得ています。
古典物理ではプラスの電荷を帯びた原子核とマイナスの電荷を帯びた電子が電気の力で引き合っていると言いますが、現代物理では光子が力を伝えています。
原子核の陽子や中性子をひと塊にしているものは、中間子と呼ばれているもので光子とはまったく異なる素粒子です。