身近な自然と科学

IHコンロに適した鍋とは 電磁調理器の欠点

ふと思い立って、卓上型のIHコンロ(電磁調理器)でインスタントラーメンを煮てみました。
地球温暖化を防ぐためには熱の放射を妨げる二酸化炭素排出を減らすには電気だろう、と。電気は半導体に太陽から降りそそぐ光子を当てて直接取り出せるエネルギーです、とは言っても太陽光や風力、波力で全使用エネルギーが賄えるとも思いませんが。

IHコンロに水を入れた鍋を置いても煮立つのが遅いこと、1kWだから遅いと言ってしまえばそれまでですが、消費電力を測ることが出来るワットメーターを接続してガックリしました。
電気圧力釜で白米1合炊くのと同じかそれ以上の電力を消費していました。主食の白米と間食のラーメンが同じ電力消費量では、私的には許せません(笑)

熱源として、ガスか? 電気か? という議論は横に置いて、IHコンロにはIH専用鍋が必要だろうと思いました。
IHコンロがガスなどの直火と違うのは、IHコンロでは鍋が放熱を伴うことです。
IHコンロは、交流電流によって極性が周期的に変化する磁界を作り、その磁界によって鍋底の鉄部分に渦電流が誘起され、その渦電流によるジュール熱によって鍋を加熱するものです。ですから、渦電流が生じる部分しか発熱し無いので、IHコンロの上に紙や布などの燃えやすい物を置いても熱くならず発火し無いので、ニクロム線を使った電気コンロやガス火などより安全と言われています。

しかし、IHコンロで鍋を加熱する場合は、下図の様に鍋の殆どが放熱部分になってしまいます。
IHコンロで鍋を加熱したときの発熱部分と放熱部分のイメージ図
鍋の中の食材を加熱する熱エネルギーの他に鍋の側面から放散する熱エネルギーも底面の狭い発熱部分から賄う必要があります。
この為に鍋の発熱部分に生じる渦電流を大きくする必要があり、大出力のIHコンロが必要になります。

他方、ガス火などの直火では、鍋の持ち柄部分まで熱くなるので解るように鍋の周囲にも炎からの熱が漏れています。
鍋を直火に掛けたときの熱のイメージ

この漏れている熱が鍋の側面を温め食材の過熱を助けています。
鍋を加熱するだけでなく周囲の空気も温めるので無駄な部分もありますが、出力の小さいガスコンロでも食材を早く加熱出来るメリットがあります。

地球温暖化を防ぐためにエネルギーを効率的に使うという観点からは、食材を加熱するためにIHコンロの出力を上げるという安易な方法より先に、鍋側面が放熱部分にならない「IH専用鍋」を作って欲しいと思います。
具体的には、鍋側面を熱伝導率が小さい物質で作ることです。出来れば、下図で示した魔法瓶の様な真空二重構造がよいですね。
IHコンロに適した鍋のイメージ
現状のIH用鍋はガス火と兼用になっているので側面まで熱伝導率がよい金属で作られています。
鍋側面から熱が逃げないようにすると効率が良いのは、電気湯沸かしポットで判っています。
少し高級な湯沸かしポットでは魔法瓶構造になっていて電気を使わなくても保温が出来るようになっていますが、この様な魔法瓶構造の湯沸かしポットでは側面から逃げる熱が少ないので少ない電気消費量で沸騰します。
熱に強く、かつ、無害な断熱材が入手できれば、IH用鍋の側面に腹巻の様に断熱材を巻けば電気消費量がだいぶ違うはずです。