身近な自然と科学

太陽熱温水器の仕組み

民家の屋根の上などに、下図のような物が載っているのを見たことがありますか。
太陽熱温水器の概観写真
これは、太陽熱で水を温める太陽熱温水器です。
太陽光発電パネルが一般的になる前には、太陽エネルギーの利用と言ったらこのような太陽熱温水器でした。 夏季には水を足さなければならないほど熱い温水を作れるので、お風呂やシャワーを日に何度も使う方には今でも太陽光発電より効率的では無いかと個人的には思います。

太陽熱温水器の仕組みは非常に簡単なので、工夫次第では自作することが出来ます。
上図の黒い部分が太陽光を受ける集熱部です。
集熱部は、太陽光を受ける面積を広くしてありますが、厚さは数センチしかなく、小容量の水を入れる容器になっています。
その上にある貯湯部は水がたくさん入る容器で、周囲を断熱材で囲って冷めないようにしてあります。
集熱部と貯湯部はパイプ2本で繋がっていて、中の水は温度差によって自然に循環します。
集熱部の上方に貯湯部を設置し、パイプは図で解るように、1本は貯湯部の下層の水が集熱部の下層に流れるように設置します(下図左側)
そして、集熱部の上層の水は上層に流れるようにしておきます(下図右側)
太陽熱温水器の作動説明図
この状態で、集熱部に太陽光が当たると、その熱で集熱部に入っている水は直ぐに温められます。
というのは、太陽光を受ける面積が広いのに入っている水は少量だからです。
太陽熱によって温められた水は軽くなるので集熱部の上方に集まり、更にパイプを通って上方の貯湯部の上層に行きます (上図右側)
集熱部から上がってきた温かい水と入れ替わって、貯湯部の下層にある冷たい水は下方に集まり、パイプを通って、更に下の集熱部の下層まで流れます (上図左側)
この冷たい水は、太陽熱によって直に温められて軽くなって上に上がり、貯湯部に戻ります。
これを繰り返している内に、貯湯部の水の温度は上がっていきます。
このような構造の太陽熱温水器は気温の低い冬季でも日当たりがよければ効率よく水を温められます。
また、太陽熱温水器は電気やモーター、ポンプなどを使っていないので、非常に耐久性があるものです。
水が温められると軽くなるのは、単位体積あたりに含まれる水分子の数が温められると少なくなるからです。
温度は分子の動きが活発になるほど高くなります(逆に言えば、分子の活発度を測るのが温度計です)
分子の運動が活発になると単位体積あたりに含まれる分子が少なくなる理由は、動き回らない人なら何十にも入れる室でも、動き回っている人たちでは何人も入れられないのと同じです