身近な自然と科学

自由落下と空気抵抗を考慮したときの落下速度を微分方程式で求める方法

微分方程式は自然現象を解明するのには不可欠ですが、とっつきが悪い代物です。微分方程式は鉛筆なめなめでは解けないものが多いのですが(解けないのでスーパーコンピューターが必要になる)、解けるものもテクニックを知らないと解けません。
そこで、備忘録を兼ねて微分方程式で簡単な現象を表してみます。

自由落下のときの速度を求める

質量$m$の物を落としたときの$t$秒後の速度$v$を求めたい。ただし、空気抵抗は無いとします。
ニュートンの運動法則の2によれば、「物体に働いている力$F$は、その物体の質量$m$に加速度$a$を掛けたものに等しい」ので、
$$ F = am \tag{1} $$
求める速度$v$が入っている式を探すと、加速度$a$は速度$v$を時間$t$で微分したものなので
$$ a = \frac{dv}{dt} \tag{2} $$ 式1の$a$を式2で置き換えると、 $$ F= m \frac{dv}{dt} \tag{3} $$
質量$m$の物には重力$-mg$の力が働いているので、式3の$F$は$-gm$になり、式3は
$$ -gm = m \frac{dv}{dt} \tag{4} $$ 式4の両辺を$m$で割って $$\frac{dv}{dt} = -g \tag{5} $$
微分方程式の式5を解けば速度$v$が求められます。

式3の微分方程式を解くのは簡単です。時間$t$で微分したら式5になる式が答えなので式6になります。
$$ v = -gt + C \tag{6} $$
ただし、$C$は定数(この場合は初速)
式6は定数を含んでいるので、一般解です。
求めた一般解に、条件を与えます。力を加えずに落とした時の初速$C$は$0$なので、式6は $$ v = -gt \tag{7} $$ となります。初速$0$という条件での解なので特殊解です。

空気抵抗を考えたときの落下速度を求める

落下するときに空気抵抗を考えると、落下する物には重力$ -mg $と落下する向きとは逆に$ bv $の力が加わります。
ただし、bは空気抵抗係数です。
空気抵抗があるときの自由落下の説明図
式4は
$$ bv - gm = m \frac{dv}{dt} \tag{8} $$
となります。両辺を$m$で割って
$$ \frac{dv}{dt} =v \frac{b}{m} -g \tag{9}$$
式9を$v$について解くのは式5とは異なって面倒です。
式9のような形になっているものを1階線形微分方程式と呼びます。
式の名前などどうでもよい、と思えなくなるのが微分方程式の厄介なところで、式の型によって解き方が違います。
空気抵抗を考えたときの一般解は
$$ v = Ce^{-\frac{b}{m}t} -\frac{mg}{b} \tag{10} $$
ただし、Cは定数。
力を加えずに落下させたときの特殊解を求めるには、式10に、時間$t = 0$、初速$v = 0 $を代入して定数$C$を求め、それを式10に代入します。

1階線形微分方程式の解き方

空気抵抗を考慮したときの微分方程式は、1階線形微分方程式になりました。
1階というのは微分を1段階行っていて、線形は$y$を含む式が直線だからです。
1階線形微分方程式の一般式は
$$ \frac{dy}{dt} = ay + b \tag{11} $$
ただし、aとbは定数です。

変数分離法と置換積分で解く

式11の右辺$ay+b $を$k$とする。 $$ ay +b = k \tag{12} $$ $$ y = \frac{k}{a-b}-\frac{b}{a} \tag{13} $$ 式13を$k$で微分する $$ \frac{dy}{dk} = \frac{1}{a} \tag{14} $$ $$ dy = \frac{1}{a} dk \tag{15} $$ 式11はay+b=kとしたので $$ \frac{dy}{dt} = k \tag{16} $$ $$ dy = k dt \tag{17} $$ 式17の左辺を式15で置き換える $$ \frac{1}{a}dk = k dt \tag{18} $$ 変数を分離します。左辺を$k$、右辺を$t$で揃えます $$ \frac{1}{ak} dk = dt \tag{19} $$ 式19の左辺を積分します $$ \int \frac{1}{ak}dk = \frac{1}{a} ln(k) + C_{1} \tag{20} $$ $C_{1}$は定数です。

式19の右辺を積分します。
$$ \int dt = t + C_{2} \tag{21} $$ $C_{2}$は定数です
式20と式21から
$$ \frac{1}{a} ln(k) + C_{1} = t + C_{2} $$ $$ \frac{1}{a} ln(k) = t + C_{3}$$ $$ ln(k) = at +aC_{3} $$ $a$と$C_{3}$は定数なので $$ ln(k) = at + C_{4} $$ 対数を指数に変換する $$ k = e^{at+C_{4}} $$ $$ k = e^{at} e^{C_{4}} $$ $$ k = C_{5} e^{at} $$ $k$を$ay + b$に直す $$ ay + b =C_{5}e^{at} $$ $$ ay = C_{5}e^{at} - b $$ $$ y =\frac{c_{5}}{a} e^{at}- \frac{b}{a} $$ $$ y = Ce^{at} - \frac{b}{a} \tag{22} $$ ただし、$C_{1}$,$C_{2}$、$C_{3}$、$C_{4}$、$C_{5}$、$C$は定数です。
式22は一般解なので、特殊解を求めるときは初期値を入れて積分定数$C$を求めてください。

「非斉次式の一般解は、斉次式の一般解及び非斉次式の特殊解の和で与えられる」という定理で解く

斉次とは次数が揃っていることです。
これから解く
$$ \frac{dy}{dt} = ay + b \tag{23} $$ は、$y$について非斉次式ですが、右辺の$b$を$0$にして $$ \frac{dy}{dt} = ay \tag{24} $$ は斉次式です。
斉次式24の一般解は $$ \frac{dy}{dt} = ay $$ $$ \int \frac{1}{y}dy = \int adt $$ $$ ln y + C_{1}= at + C_{2} $$ $$ ln y = at + C_{3} $$ $$ y = e^{at + C_{3}} $$ $$ y = e^{C_{3}} e^{at} $$ $$ y = C e^{at} \tag{25} $$
次に非斉次式23の特殊解を求めます。
$ ay + b = 0$ とすると、特殊解は
$ y = \frac{-b}{a} \tag{26} $$y=ーb/a     ・・・式26$$
となります。
非斉次式の一般解は、斉次式の一般解及び非斉次式の特殊解の和で与えられるのですから、式25の右辺に式26の右辺を足します。
$$ y = Ce^{at} - \frac{b}{a} \tag{27} $$
変数分離法と置換積分で解いた結果が一致しました。