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野菜や果物を水に浸ける理由

小松菜やほうれん草などの葉物野菜は根元を水に浸して立てておくと、葉から水が蒸発しても根元から水を吸い上げるので萎れなくなります。
完全に萎れた葉物野菜は酸素を多く含んだ水の中に、葉先から根元まで浸して置くと、栄養分は減少していても外見だけは元に戻ります。
大量の萎れた野菜を元に戻すには、冷水に野菜を浸して冷水に空気を送り続けます。
野菜が高値のときでも安価で助かるモヤシを保存する場合は水に浸けてから空気に触れないように ポリエチレン袋などに入れて冷蔵庫に入れます。
モヤシは種子から芽生えた直後で活性化が強いために含まれている酵素の酸化が激しく、直ぐに黒変してしまいます。
「もやし」を水に浸けたままに置くと、ビタミンCは三日後には半分に減りますが、ポリ袋に入れて冷暗所に置いたものはビタミンCが85%残るという報告があります。

野菜や果物を水或いは食酢を少し入れた酢水に入れる理由

細かく切った野菜を水に浸すのは、サラダなどにする場合は灰汁を抜くと同時に歯ざわりを良くするためです。
細胞内にある液体中には栄養分などがあるので真水より濃く、そのために浸透圧によって 切り口付近の細胞内に外部から水が浸入して細胞が膨らむのです。
浸透圧というのは、隣接する液体の濃度(細胞内と外部の)を一定にしようとする圧力です。
このとき、野菜を漬ける水は冷たいものを使ってください。
水温が高いと繊維質がふやけて歯ざわりが悪くなります。
また、長時間水に漬けておくと、逆に野菜の細胞から水に溶ける栄養素(たとえば、ビタミンCやB)が水に流出してしまうので短時間にすることです。
食品を切ったときに切り口の色を変えないために水や酢水に漬けることがあります。

  • じゃがいも
    ジャガイモに含まれているアミノ酸の一種であるチロシンが酵素のチロシナーゼで酸化されて、メラニンになるために切り口が褐色になります。
    メラニンの合成を防いで変色しないようにするには空気中の酸素に触れないようにする、或いは、チロシンやチロシナーゼを除去してしまえば変色しません。
    そこで、切ったジャガイモは水に漬けて、チロシンやチロシナーゼの濃度を薄めてしまうと同時に水で空気中の酸素に触れないようにします。
  • 独活、牛蒡、蓮根
    ウドやゴボウ、レンコンは水に食酢を少し入れて酸性にした酢水に漬けると、変色しません。
    これは、含まれるフラボノイド色素が酸性では無色になることを利用しています。
    フラボノイド色素はアルカリ性になると黄褐色に変化します。
    レンコンの場合はムチンという成分が粘りを起こすので酢水に漬けてムチンを変化させて粘りを取り除く効果もあります
  • 芋茎(ずいき)
    赤サトイモの葉柄で、干したものは「芋がら」と呼ばれるものですが、アントシアンと呼ばれる色素が含まれ、 アントシアンは酸性にすると赤くなるので、芋茎は酢水に漬けて赤くします。

何れにしても、 切り口が変色する野菜や果物の場合は水に漬けておけば変色する物質が溶け出して薄められるので酷く変色することはありません。
リンゴを食塩水に入れるのは酵素の働きを抑え、浸透圧の関係でリンゴの味が抜け難くなります。
酸化によって変色するもの(ジャガイモ、リンゴ、モモ、ナス、ジュース類など)は酸化の逆の反応である還元作用のあるビタミンCを添加しておくと、変色が抑えられます。