身近な自然と科学

魚の眼が飛び出している理由

魚の眼と言っても、皮膚に出来るものでは無く、川や湖沼、海に生息する「さかな」が外界を見る目です。
魚の眼も人間の眼と同じように水晶体がレンズになって網膜に像を結びますが、困ったことに、眼の角膜や水晶体を作っている組織の屈折率が外界の真水や海水よりほんの少ししか大きくないと言うことです。
下図は、光が異なる媒質の境目で屈折する「スネルの法則」を説明したものです。
スネルの法則による魚の目が飛び出している理由の図
入射角と屈折角を表す式 n1×Sin(n1)=n2×Sin(n1) で判るように、水または海水と魚の眼の中の液体の組成の違いが僅かならこれらの屈折率n1とn2の違い僅かです。
ということは、水中から眼に入った光は角膜や水晶体に入射したときに大きく屈折しないということです。
人間の水晶体と同じ曲率を持った水晶体では網膜より遠い点に焦点を結んでしまい、 遠視状態でぼやけて見えます。
それでは眼の奥行きが大きくなりすぎるので短い距離で像を結ばせるようにするには水晶体の曲率を大きくしなければなりません(曲率というのは曲がり具合を、その部分を円の一部と見なして円の半径の逆数で表したものです)
魚の場合には、ほぼ球状の水晶体になっています。
人と魚の水晶体の断面のイメージ
イメージとして は、左が人間の水晶体の断面、右が魚の水晶体の断面。水晶体がほぼ球形のために、魚の眼は外側に飛び出しています。
同じ理屈で、視力が正常な人が水中眼鏡をつけないで水に潜ると、像が網膜より後方に出来るために遠視になってしまいます。
近視の方はその程度によりますが屈折率が弱まるのでよく見える場合もあります。
人類がそのまま海から上がって陸上動物になったとしたら、近視の方は水中生活に適していたご先祖様に帰っただけかも知れません。