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五箇山の硝石作り

時代劇の定番と言えば、「水戸黄門」か「暴れん坊将軍」か、それともNHKの大河ドラマ?
水戸黄門と言えば、初代の黄門様を演じた東野英二郎氏が最も似合っていると思います。
それはともかく、水戸黄門には黒色火薬の原料になる硝石の話が出てくることがあります。 因みに、花火は、硝石が丹生出来れば簡単で、木炭の粉と硫黄粉、色を出すための金属粉(金属の炎色反応)を入れて作ります。

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花火に色が出る理由
代官と商人が手を組んで横流したり、花火職人が花火をつくれないように硝石を買い占めたりというような筋立てです。
硝石の横流しの話は合掌造りで有名な富山の五箇山でしたっけ?

江戸時代の一般的な硝石作りの方法

床下の土の中に、家畜糞や人糞、雑草などを埋めておくと、20年後ぐらいには硝石が出来ます。
先ず、糞中などに含まれる窒素化合物(タンパク質や尿素)が腐敗細菌やカビによって分解されてアンモニアが出来ます。
このアンモニアが硝化菌(アンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌)によって硝酸イオンに変わり、硝酸イオンは土壌中のカリウムイオンと結合して硝石になります。
床下に家畜糞などを埋めるのは、太陽光が当たる所では、雑草が生えて、硝酸イオンは植物の栄養源となって吸収されてしまうからです。 作物を作るときは肥料になってよいのですが、硝石作りでは硝酸イオンが減ってしまって困るので、埋めたのを忘れるぐらい長期間に渡って太陽光を当たらない床下が選ばれたのです。
この方法の問題は、硝化菌は酸素が大好きで大量消費する上に、菌の増殖が非常に遅いので硝石が出来るまで20年は掛かってしまうことです。

窒素化合物が硝酸イオンになる過程は、植物の肥料として人間の食べ残りを土壌に混ぜる場合も同じです。
床下と異なって太陽光で地面が温められ、深く埋めないので空気中の酸素に触れるので時間はそれほど掛かりませんが、植物が吸収される状態に変化するまでは時間が掛かり、その過程で有害なアンモニアも出ます。
そこで、市販されている窒素肥料は、窒素の酸化が最終状態になっていて植物が吸収できる硝酸態窒素にまで変化させたものになっています。

五箇山の硝石作りの特徴

五箇山の硝石作りの方法は、床下で作る方法を発展させたものです。
  • 硝化菌が早く増殖するように温かい囲炉裏近くに穴を掘り、家畜糞などを埋めます
  • 年に3回ほど掘り返して空気中の酸素を入れ、家畜糞などを追加します
  • 年に1度は、その土を板の上に広げて酸素に十分触れさせます。
このように手間を掛けると、5年目から毎年硝石が取れるようになります。