無効電力の意味と無効電力の必要性
送電線で生じる損失計算(電柱の送電線と単相三線式の利点と欠点)で「力率」を無視して計算しましたが、力率の背景である無効電力は悩みどころです。
力率は、供給された電力と消費された電力の比で表されます。
ニクロム線を使った単純な電熱器の場合は、供給された電力全てが消費されるので、力率=1 です。
扇風機のようにコイルを使ったモーターが入っている機器の場合は、電圧に対して電流の位相が遅れるので、例えば、 電圧値が1のときに電流が0.5ということになって供給された電力の全てが消費されません。
このように消費されない電力を「無効電力」と言います。
供給される電力は見かけという意味で「皮相電力」と言い、交流電圧計と交流電流計で測った値を乗算したものです。
そして、力率は無効電力と皮相電力の比で、0~1までの値をとります。
ですから、負荷に交流を流した場合の有効電力(消費される電力)は、電圧×電流×力率 となります。
また、力率は電圧と電流の位相のずれをΘとすれば、 cos(Θ)なので
有効電力は、電圧×電流×cos(Θ) で表され、無効電力は、電圧×電流×sin(Θ) で表されます。
無効電力は無駄なものと思われる方もいらっしゃるとおもいますが、無効と言いながら重要な役割を果たしています。
ここで、損失の無いコイルを考えてみます。 コイルを作っている線材の電気抵抗が0で、磁気漏れが無いということです。
磁気漏れが無いというのは、コイルに電流を流すことによって出来た磁力線がコイルの外に漏れて仕事をしないことを指します。
子供の頃に作った、鉄釘にエナメル線を巻いて作った電磁石は磁気漏れしています。
もちろん、電磁石を使ったベルやブザーも、他に仕事をさせているので磁気漏れしています。
無効電力の本質
損失の無いコイルに交流電流を流すと、磁力線が生じて、コイルに流された電流は磁気エネルギーという形で蓄えられます。
そして、コイルを流れる電流が減少するときにこの電流を増やす方向に磁気エネルギーを電気エネルギーに変えて放出します。
コイルに損失が無いので、結果的に電気エネルギーは電源とコイルの間を往復しているだけということになります。
これが、無効電力の本質で、単に負荷で消費されない電力と言う意味ではありません。
そして、この無効電力があるので磁力線が生じ、交流用モーターや変圧器などは動くことになります。
無効電力も良いものだと思うと、電力供給側は無効電力の多い(力率の低い)機器を使っている消費者を嫌い、 力率を向上させると電気料金の割引があるくらいです。
無効電力でも送電線を流れる電気には変わりが無いので、無効電力分も含めて送電設備を大きくしなければならないからです。
という理由は表向きで、実際は電力料金を算出する電力メーター(積算電力計)では、無効電力を測れないからではないでしょうか・・・
電力送電における無効電力の必要性
更に話は悩ましくなります。
電力供給側は無効電力を嫌っているはずなのに、送電線上に積極的に無効電力を流しているのです。
パソコンにDVDドライブやハードディスクを増設したら動かなくなったと言う話を耳にしますが、 これは電力がたくさん必要となったので電源が供給できずに電圧が下がってしまったのです。
送電設備でも需要が多くなったために電圧が下がると言う現象は起こりますが、電圧を一定に保つために無効電力が必要なのです。
需要が多くなると無効電力が不足し、電圧が下がります。
需要が少なくなると無効電力が過剰になって、電圧が上がります。
そのため、無効電力を調整するために、送電設備には、 電力用コンデンサー(位相を進める)とコイル(位相を遅らせる)があり、これらを適時切り替えて無効電力量を調整しています。
このあたりの理屈は理解に苦しみますので、計算好きな方にお願いします。
計算は、四端子回路網です。
送電線の誘導リアクタンス(コイルの働きをする)を2個直列にして、その両端を、入力端、出力端とし、 2個の誘導リアクタンスの間に容量性リアクタンス(コンデンサーの働きをする)を繋いで接地します。
T字型です。
コンデンサーというのは、電気を通すものが絶縁体を挟んで電気的に影響し合っているものです。
送電線間や送電線と大地の間は空気を絶縁体としたコンデンサーと考えられます。
この四端子回路で、入力端と出力端の電圧を変化させないで電力を多く取る方法を考えます。
リアクタンスは変わらない、電圧も 一定、電流は変化させたいもの、それで電力を多く取れる方法があると言われたら、 変えられるものは回路を流れる電気の位相しかないのは計算するまでもありません。
計算が苦手な私は上記のように理由にならない理由で逃げてしまいますが、計算が得意な方は挑んでください。