鳥でも高圧送電線なら感電する理由
電線に止まっている鳥が感電しない理由 で疑問を持った方がいらっしゃると思います。
送電線は銅などのよく電気を通す金属線で作られ、金属を保護するためにゴムやビニールなどで被覆されています。 ゴムやビニールはもちろん電気を通しませんから、鳥が止まっても感電しないのでは無いか? という疑問です。 家庭に引き込まれている100V程度の低い電圧では絶縁物が被覆されている電線はどう触っても感電しません。
しかし、電圧が高くなると、電線がゴムやビニールなどの電気を通さないもので覆われていても感電することがあります。
例えば、上図左のように人が電線を握ったり近づいた場合、電線がゴムなどの絶縁体で覆われていたときには電線と手の間がコンデンサーになって、上図の右のような電気回路で表されます。
(抵抗は実際には純粋な抵抗では無くインピーダンスと呼ばれ、純粋な抵抗分の他に電流の位相を進めたり遅れさせたりする成分を含んでいる)
コンデンサーというのは、絶縁物を挟んで向かい合わせた金属板に電圧をかけたもので、コンデンサーの入った交流回路では電流が流れます。 コンデンサーが交流電源に直列に入った上図右のような回路では、交流電源の周波数が高くなるほど回路を流れる電流は大きく、コンデンサーの容量が大きくなるほど大きく、 電源の電圧が高くなるほど大きくなります。
そして、コンデンサーの容量は、金属板の間に挟んだ絶縁物が同じなら、金属板の面積が広いほど、金属板の間隔が狭いほど大きくなります。
人間が超高圧送電線を握った場合には、靴底がゴムで、ゴム手袋をしていたとしても、 これらのゴムはコンデンサーの金属板に挟んだ絶縁物と同じになって人間に電流を流し、感電させます。
もちろん、直接、送電線を握らなくても、コンデンサーの絶縁物が「ゴム+空気」となるだけで、電圧が高ければ感電します。
電線に凧が絡まって取れなくなった場合などで、棒で凧を落とすことが危険と言われるのも同じ理屈です。
金属製の棒でなくても水分を含んでいたりして空気より電気を通しやすくなっていれば高圧電気と人間を近づけてしまい、 例え絶縁物で出来た手袋をしていても近づけたことでコンデンサーの容量を増やしてしまいます。数十万ボルトという超高圧送電線では送電線から1mぐらい離れていても感電します。
鳥など空中を飛んでいる動物が超高圧送電線に近づいた場合も同じです。下図のように、コンデンサーの絶縁物が空気に代わるだけです。
ただ、高圧送電線と鳥の場合には送電線と大地の間に電流が流れるのでは無く、平行して張ってある近くの送電線との間に電気が流れやすいです。
ですから、超高圧線に鳥が近づくと感電死するかショックで落下してしまいます。その前に異変を感じて近づかないでしょうけど。 高圧線に留まっている鳥の写真を撮りたくて注意して見るのですが、未だに高圧線に留まっている鳥を見たことがありません。