相対性理論:アインシュタインが少年の頃にした光の速度の関する思考実験と日常生活まで
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光の速度で直ぐに思い出すのが、アインシュタインの相対性理論です。 この理論によれば、「光より速く信号を伝えるものは無い」ということになります。
光は、私たちの 目で見えるので「光」という名前が付いていますが、テレビや携帯電話で使われる電波(電磁波)と同じものです。
電磁波は、文字どおり、 エネルギーが電界と磁界という二つの形態の間を行ったり来たりして伝わる波です。
ですから、自動車や電車が停まるように電波が停まるということはありえません。停まったら伝わらなくなります。
ニュートンがつくり上げた“ニュートン力学”がアインシュタインによって自然界の法則の特別の場合になってしまったように、光速を超えたところ、 たとえば、光さえ逃げられないというブラックホールの内部には「アインシュタインの相対性理論が特殊な場合だけに成り立つと言われるような、私たちの知らない世界」があるのかも知れません。
光の速度を超えられるか、光の速度を超えた世界に何があるかはこれからの研究を待つしかありませんが、「光速を超えられない」と主張するアインシュタインは、少年時代に「光と同じ速度で光を見たら」ということに興味を持ったそうです。
アインシュタインが少年時代にした思考実験
片側2車線以上の道路などで自動車Aと自動車Bが平行して同じ方向に走っているとき、自動車Aから自動車Bを見ると、 2台の車が同じ速度になったときは自動車Bが止まっているように見えます。
同じことは、東京でたとえると、山手線や京浜東北線、東海道線、宇都宮線などに乗っている時に同じ方向に走っている電車を見かけるとしばしば経験します。
ここで、光速まで出せる自動車に乗り、光と平行に走らせたら自動車から光はどのように見えるでしょうか?
自動車A自動車Bの例からすると、自動車と光の速度が同じなら自動車から光は止まって見えるはずです。しかし、前述したように電界と磁界の間でエネルギーが移動しているから光なのですから停まって見えることはありえない訳です。
移動している物から物を発射したとき
さて、時速1000kmで飛んでいる飛行機から時速1000kmで小型飛行機を飛び立たせると、小型飛行機の速度は時速2000kmになります。
これはニュートン力学で説明される速度の合成といわれるもので、私たちの思考と合致するもので容易に理解できます。
例えば、下図の様に等速度で右に走っている電車の中で物を落とすと、落とした人の真下に落ちます。
これは電車内で誰も経験したことがあると思います。 バックや乗車券をうっかり落としてしまってもその真下に落ちます。
ところが、電車の外から見ている人には、物はAからBまで進んでいるので、電車が進んだ距離だけ電車の進行方向に物が落ちながら進んだことになります。
ですから、電車内でキャッチボールをしている姿を想像すれば、ボールを電車の進行方向に投げたときは、ボールは投げた速度と電車の速度を加えた速度で移動します。
電車の進行方向とは正反対の方向に投げているときは、電車の速度から投げた速度を引くことになります。
投げる前のボールが電車と同じ速度を持っていなければ、キャッチボールは成立しません。
自転と公転している地球上でキャッチボールが出来ているのですから、改めて電車を持ち出すことは無いのですが。
電車や飛行機より、現実には作れないだろうと思われる、光速の半分の速度15万kmで飛んでいるロケットAから光速の半分の速度15万kmで ロケットBを発射するとどうなるでしょう?
時速1000kmのロケットの時と同じ計算をすると光の速度30万kmと同じになって、止まった光が見える可能性が出てきてしまいます。
アインシュタインは光の速度は一定で、時間と空間が変化すると考えました。
このあたりから、説明と理解がし難くなります。
2段ロケットの様にロケットAからロケットBを発射するのですから私たちがテレビなどで見る衛星を静止軌道に乗せる多段式ロケットなら2段目のロケットBの方が1段目のロケットAより速度は速いです。 光速に近いスピードのロケットでもロケットBの方が速いでしょう。そうでなければ、ロケットAからロケットBを発射できませんから。
アインシュタインは、動いている物の中にある時計は止まっている物の中にある時計より遅く進むと考えました。
ロケットAよりロケットBの方が時間の進みが遅いのです。速度は、移動した距離÷時間ですから、 移動した距離が大きくても時間が間延びしていれば速度は大きくなりません。時間の間延びは光速に近づくほど大きくなるので、 何段ロケットにしてもロケットの先端が光速になることはありません。ロケットAとロケットBを地上から見ている人の時間間隔はロケットAより進んでいますから、 ロケットAとロケットBの移動距離がどんなに大きくてもその移動に要した時間が短いので光速にならない訳です。 アインシュタインによれば時間は変化するのです、そしてこの理論は実験によって証明されています。
⇒ 時間は変化するということの説明
私たちが利用するような航空機などの乗り物に乗ったときでも外の人より時間が長くなっていますが、速度が光速よりはるかに遅いので時間の延びがほんとうに僅かで無視出来ているだけです。
ジェット機に原子時計を載せて計測すると、ほんとうに僅かですが、時間が遅く進むのが確認できるそうです。
⇒ 原子時計の仕組み
ニュートン先生の速度の合成は、私たちの感覚内では成立します。数学ならたとえ僅かでも違うといいますが、物理は求める物に影響が無ければ無視します。
アインシュタインの特殊相対性理論では動いている時計は遅くなり、一般相対性理論では重力が小さいと時計の進みが早くなります。
アインシュタインの相対性理論の話は何回説明されても理解できませんが、この理解できない理論は身近なところではGPSに利用されています。
GPS衛星は速いスピードで地球を周回しているので衛星に積まれている時計は地上の時計より遅くなります、 しかし、数百キロ上空なので重力が地上より小さいので時計は早く進みます。この時計の補正に相対性理論が使われています。