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美味しいご飯の炊き方



水で洗わなくてよい無洗米も売られていますが、昔ながらの普通の米の場合は、炊く前に研ぎます。
  1. 研ぎ方(洗い方)ですが、大量の水を入れて2,3回かき混ぜて直ぐに水を捨てます。
    この間は手早く(1分以内)にします。
    手早くするのは、米の表面に付いている糠の臭いが移った水が米に吸収されされのを防ぐためです。
    米は水に漬けてから1分内に10%以上の水分を吸収し、その後は徐々に吸水するので、1回目の洗いを手早くするのが肝心です。
    水を取り替えて洗う回数は、2,3回で十分です。
    水が白くなるまで洗えというのは精米技術が発達していなかった昔の話で、洗いすぎるとデンプン質まで取ってしまいますし、 少し含まれているビタミンBを捨てることになりますが、過剰に摂取しがちなリンを少なくできるので考えようです。
    リンはカルシウムと1対1の比率で摂るのが良く、リンが多くなると骨がもろくなると言われています。骨粗しょう症です。
    しかし、精米した後、温度の高い所に長期間置いた米はよく研いだ方がいいです。

    福島の原子力発電所事故による水道水の放射能汚染問題で、「米を研ぐときは、1回目はミネラルウォーター、2回目3回目は水道水、 4回目(炊く水)はミネラルウォーターが良い」という話があるようです。フジテレビの番組では根拠が無いと言っていましたが、 米は1回目の水を多く吸収するということから生まれた話なのでしょう。
  2. 米を洗ってからザルなどに上げておくと、米の表面が乾いてひびが入るので水に漬けたままにしておきます。
    漬けておく時間は、米の中心部まで水を含ませる必要があるので、水温が高い夏場で30分、水温が低い冬場で1時間ぐらいです。
    炊飯器では水温と吸水時間を考慮しているので取り扱い説明書どおりにすれば美味しく炊けますが、キャンプなどで炊飯器を使わない場合は吸水時間を考慮してください。
    米の中心部に水分が少ないと、米の外側だけ煮えて芯が硬いご飯になってしまいます。
    しかし、吸水時間を無闇に長くすると、米が柔らかくなりすぎて米粒の形が崩れてしまいます。
    急いでご飯を炊かなければならないときは吸水時間が無いので「湯炊き」をします。
    米を洗ってから、ぬるま湯を入れ、弱火で沸騰するまでの時間を長くするものです。
  3. 水加減は、米の容積の2割増しの水を入れるのが普通ですが、新米は米の容積と同量か1割り増し、古米は米の容積の2.5割り増し程度にします。
    来客時などで特に美味しく炊きたいというときは、硬くならない程度に水を減らした方が美味しくなります。

    混ぜご飯(五目飯)を作るときは、入れるものによって水加減を調節しますが、豆やイモ類は、 食材中の水分はデンプン分子と結びついているので煮ても水分は外に出ませんから、米の水加減は通常と変わりません。
    もちろん、火を通していない豆や芋を米と一緒に炊くときは、通常より水を多く入れます。
    しかし、貝類、山菜、大根などは煮ると水分が出るので、水を減らします。
  4. 火加減は炊飯器を使うときには気を遣う必要はありません。
    キャンプなどで火を起こしてご飯を炊くときには、初めは水温を上げるために中火から強火にします。
    米に吸水させる時間が短かったときは弱火で時間を掛けて沸騰させます。
    沸騰した後は米粒が釜の中を上下に動くようにするためと吹き零れないように弱火にします。
    水蒸気の出る量が少なくなったら弱火にし、頃合を見て火を消します。
  5. 火を止めたら、15分程度そのままにして蒸らします。
    蒸らす理由は、米のデンプン質を糊状にするためです。
    澱粉は60度以上になれば糊化しますが、細胞膜に包まれた米の澱粉は100度近い温度で20分ぐらい加熱しないと糊化しません。
    そこで、蓋を開けないで15分ぐらい置いて蒸らします。
    途中で蓋を開けると、温度が下がって糊化せず、また、米の表面の温度が下がって水蒸気が液体となって米に付いて水っぽくなってしまいます。
    蒸らす過程は、炊飯器で炊く場合でも必要です。
    マイコン付の炊飯器では蒸らし時間まで入れて炊き上がりのサインを出してくれますが、少し水が多かったときは蒸らしを長くすると美味しくなります。
  6. 蒸らしが終わったら、炊飯器の蓋を開けて、しゃもじでご飯を軽くかき混ぜます。
    かき混ぜると、水蒸気が外に出て、水蒸気が米粒について水になり、米粒がべたつき難くなります。

1人分のご飯を美味しく炊く方法

1人分用の炊き方が出来る炊飯器を使うと良いですが、炊飯器を使わないで炊くときには、火に掛けてから沸騰するまでの間を7分ぐらいにします。
少量の米と水は直ぐに沸騰してしまうので米粒の中心部まで水や熱が入り込む前に米粒の外側が軟らかくなって全体としては不味くなってしまいます。
そこで、沸騰するまでの時間を長めにする訳です。

冷めたご飯が不味くなる理由

ご飯は冷めると、不味くなります。
これは、米の澱粉が炊く前の状態に戻るためです。
炊く前の澱粉は、ブドウ糖の分子が鎖状に結合したものを束ねた状態(ミセル)になっています。
この状態をβ澱粉と呼びます。
水を入れて加熱すると、ミセルの間に水分子が入り込んで、澱粉は糊状になります。
この澱粉をα澱粉と呼んで食味と消化が良くなります。
炊き立てのご飯はα澱粉ですが、冷めるとα澱粉がβ澱粉に逆戻りします。
温度が2から3度、水分量が30から60%の状態のときがβ澱粉に戻りやすい環境です。

※濃くのある杵搗き風味を出したいときには、米3カップに対して油小さじ2ぐらいを入れて炊きます。
これは、玄米から白米にするために杵で搗いたときには、油を含んでいる糠と白米との接触時間が長いために、機械で高速に白米にするときより白米に糠の油が移るためです。
もちろん、このときに入れる油は新鮮な新しいものを使います。