砂糖(ショ糖)の性質と食品への利用

砂糖はサッカロース(蔗糖)です。
希酸や酵素によって加水分解して葡萄糖(グルコース)と果糖(フルクトース)になります。
ブドウ糖と果糖はこれ以上は分解できない単糖で、ブドウ糖は生体内ではエネルギー源になり、果糖も代謝に重要な役割を果たしています。
このため、江戸時代以前は砂糖は薬として扱われることがありました。
経口摂取が出来ない患者にブドウ糖が入ったものを点滴で静脈血管に入れたり、 糖尿病疾患など低血糖になる危惧がある患者が飴やブドウ糖を持ち歩いていることは周知の通りです。

砂糖は大きく、分蜜糖と含蜜等の2つに分けられ、 糖蜜を含まないものを分蜜糖、糖蜜を含むものを含蜜糖と言っています。
糖蜜とは・・・
私たちが多く使っている白い色の砂糖は、サトウキビなどの原料から蔗糖(サッカロース)だけを抽出することによって作られています。
砂糖原料から蔗糖を除いた残りが糖蜜と言われます。
糖蜜は50~70%の糖と不純物を含んでいます。

ザラメ糖、グラニュー糖、上白糖、中白糖、三温糖、角砂糖、氷砂糖などは分蜜糖です。
黒砂糖は含蜜糖です。
分蜜糖と含蜜糖の中間にあるのが、和菓子に使われることが多い、和三盆糖です。


蜜糖を含まない砂糖の性質について

砂糖の性質でももっとも驚くのは、水に対する溶解度です。
零度の水100グラムに179グラムの砂糖が溶けます。
100度では487グラムの砂糖が溶けます。
ただし、溶けると言っても塩の様にイオン化する訳では無くて、 砂糖の分子状態のまま水分子と結合する水和物となります。
砂糖水が塩水の様に電気を通さない理由です。

吸水性が高いのも砂糖も大きな特徴で、 この性質は砂糖の用途を甘味料以外に広げています。
先ず、食品の保存性を高めます。
砂糖は水を吸いつけるので細菌類が繁殖し難くなります。
羊羹や砂糖漬けの保存性が高い理由になっています。
砂糖濃度が高くなるほど保存性が高くなり、 市販されている砂糖には消費期限の表示がありません。
ただし、黒糖は不純物を含んでいるので保存性は劣ります。

また、砂糖の吸水性はデンプンのβ化を防ぎます。
たとえば、炊き立ての米飯のデンプンはα化したデンプンです。 α化したデンプンは消化吸収が良くて美味しいのですが、 冷めるとデンプンがβ化して美味しくなくなります。
デンプンのαからβの変化には水分量が影響しています。
水分量が少ないときにはβ化が起こり難くなるので砂糖濃度が高い食品は美味しく食べられる期間が長くなります。
⇒ 冷えたご飯とお煎餅

砂糖の吸水性は、ゼリーやジャムを作るときにも役立っています。
ゼリー化に重要な役割を果たすペクチンから水分を奪い、ペクチン分子間の水素結合を容易にします。

砂糖が水に多量に溶ける性質は食品の酸化防止に役立っています。
砂糖濃度が高い水溶液は酸素が溶け込む隙間が無いので酸素が入り込めず、 酸素が少ないということは食品の酸化防止になっています。

水に砂糖を溶かした砂糖水は、沸騰点が100度以上になります。
10%溶液で100.4度、90%溶液で130度になります。
砂糖煮を作るときには注意する点です

餡を作るときには、砂糖の性質と効用の多くを知ることが出来ます。
十分に水を含ませた小豆を軟らかくなるまで煮てから砂糖を入れると、 砂糖が小豆から水分を奪って水を足したように鍋の中の煮汁が増えたように感じます。
うっかり、飛び散った煮汁が皮膚に当たると、砂糖を入れたことで煮汁が100度以上になっているのが判ります。
餡が出来上がり冷めても餡は美味しいままです。 これは、小豆のデンプンが砂糖によって水分を奪われて煮たときと同じαデンプンのままだからです。
砂糖を多く入れた餡は傷み難くなります。