季節を知る日時計の作り方と円周角の定理の応用と証明
フォルバッハの旅行用日時計は変わっています。ローマの建築家ビトルビウス著作に載っているそうですが、これは太陽の高度から季節を知るものです。時計が無い古代でも何処で使うのか想像がつきません。
この季節を知る時計の原理は至極簡単明瞭です、 日常経験することですが、正午の太陽の高度は、冬は低く、夏は高いから正午の太陽高度を測れば季節と凡その月が判るというものです。
例えば、東京の毎月1日の正午の太陽高度は、2018年は
31.1, 37.0, 46.5, 58.5, 68.7, 75.5, 76.9, 72.0, 62.2, 50.5, 39.1, 32.0
となっています。太陽高度の値は年が変わっても1度ぐらいしか変わらないので、今が何月か凡そ判ります。
日時計でもインテリアやオブジェぐらいしか用途が無いのに凡その月が判るぐらいでは工作してもおもしろみに欠けるのですが、 中学生で習う幾何学の定理を応用したものなので、夏休みの自由研究のヒントになるのでは?と思って紹介します。
フォルバッハの旅行用日時計は下図の様に太陽光を通さない材質で作られた円筒状の1ヵ所に孔を開け、その孔から射し込む太陽光が筒の内側に当たった位置で太陽の角度を測るものです。
この季節を知る日時計の工作で最も注意することは円筒の断面を真円にすることです。
日時計に限りませんが、測定器を作る場合は目盛を刻むのに苦労します。この季節を知る日時計も太陽高度を測るだけなら円筒に開けた孔から射し込む光りという凝った事をしないでも、と思います。
ところが、円筒を使うのは角度目盛を簡単に作るためです。
下図は、太陽 S1 と太陽 S1の角度の差を求める説明図です
太陽の高度がS1にあった時に円筒に開いた孔hから射し込んだ太陽光が照らした点をA、同様に、太陽の高度がS2にあった時に照らした点をB、円筒の断面が作る円の中心点をOとします。
すると、「円周角の定理」によって、弧ABを共通とする円周角(∠AhB)は、中心角(∠AOB)の半分の角度になります。言い換えると、中心角は円周角の2倍になります。
ですから、太陽の高度S1とS2の差は、中心角では2倍になるので直接測るより精度が2倍で、円筒の内側に長さを刻んだ紙でも貼っておけば、S1とS2の差が求まります。
例えば、円筒の直径が50mmなら、円周は50(mm)×3.14=157(mm)で約157mmです。157mmが360度ですから、1度は約0.43mm。手書きで書くには細かすぎますし、手持ちでぶら下げて高度を測る構造ではそれほど精度が出ないですから、2mm毎に目盛を刻むことにすると、約0.87度、中途半端です。目盛を切りよくするには円筒の直径を調節すればよいのですが、そこまでしても・・・
「円周角の定理」の証明
- ∠AOB=2∠AhBを求めるように考えますが、数学の証明問題は手順を知らないと手こずる場合が多いです。
円と三角形の性質を利用するしか無いと解っていても・・・
幾何の問題は補助線を引くとうまく行く場合が多いので、とりあえず、円筒の孔hから中心Oを通った直線が円と交わる点をCとします。
また、∠○○○という表記は頭の回転が遅い私には思考の妨げになるので、
最終的に残す円周角∠AhBを x (∠AhB=x)
中心角∠AOBを y (∠AOB=y)とします - 三角形OhBについて、定理「三角形の外角はそれと隣り合わない2つの内角の和に等しい(三角形の内角の和は2直角)」を使うと、
∠COB=∠OhB+∠hBO
三角形OhBは二等辺三角形なので、∠OhB=∠hBO です。
ここでも、表記を変更して、∠OhB=∠hBO= α とします。
ここで、円周角xを表してみると
x+α=∠OhA ・・・式1
中心角yを表してみると
y+2α=∠AOC ・・・式2
∠OHAと∠AOCを α か β で表されれば、何とかなる感じ? - 三角形OhAについて、定理「三角形の外角はそれと隣り合わない2つの内角の和に等しい」を使うと、
∠COA=∠OhA+∠hAO
三角形OhAは、二等辺三角形なので、∠OhA=∠hAO
表記を変えて、∠OhA=∠hAO=β として、
手順2の式1 x+α=∠OhA は
x+α =β
x=β-α ・・・式3
手順2の式2 y+2α=∠AOC は
y+2α =2β
y=2βー2α=2(βーα)・・・式4
式4に式3の βーα を代入すると
y=2x
表記を戻して、
∠AOB=2∠AhB
中心角∠AOBは、円周角∠AhBの2倍になりました