身近な自然と科学

メダカの飼い方

2013年秋、魚取り用の網で田んぼの側を流れている水路の中を救っている小学校低学年の子供たちを見かけました。
私が子供の頃なら、タナゴやフナ、ウグイ、ドジョウ、メダカ、ザリガニなどが獲れましたが、メダカを見ることが難しくなった今でも獲れるものがあるのでしょうか。
子供たちが遊べる身近な小川や農業用水路に小魚がいなくなったのは農薬の所為だと言われてきましたが、農業用水路が地中を通っているのが大きな原因のようです。
メダカをたくさん見かけた頃は小魚が棲んでいる下写真の様な川から田の畦の外側を流れる水路に水を引き、そこから田に水を入れていました。
田畑の中を流れる川の写真
しかし、今は、 川の護岸はコンクリートで固められ、用水路が地中に埋設されたパイプの中を通っているのでは小魚や虫たちが卵を産み付けたり越冬したりする場所がありません。
田に水を入れる地下水路の出水口の写真
地下水路から田に水を入れる出水口

それはともかく、11月に入って、水音を聞き、水草や魚を眺めていると気持ちが和らぐので、安価なヒメダカを 買ってきました。
(グッピーの方がよいのですが、病気が怖いので今回は止めました。
⇒熱帯魚飼育顛末記
メダカは小さいので酸素消費量や排泄物量が少ないため、広口瓶などのように空気と触れる面積が大きい容器を使えば、エアーポンプで水に酸素を溶け込ませる必要が無いのもメダカ飼育の利点です。
それで、ペットボトルでもメダカを飼うことが出来るのですが、難点はメダカは水流に弱いことです。
メダカは自分の位置を一定にするために水の流れに逆らって泳ぐ性質があり、水のろ過装置を使うと水流のためにメダカが疲れてしまいます。
因みに、この性質は、メダカが見ている景色の動きに左右されるので水が実際に流れていなくても景色が動いていれば、 メダカは見えている景色を止めるように泳ぎます。

メダカの飼育にはエアーポンプを使う必要が無く、静水を好むということで発泡スチロールの箱でメダカを飼うことにしたのですが、メダカを入れてみると想像以上におもしろくないです。
メダカの写真
池や睡蓮鉢で飼うならともかく、普通は見られない方向から水というフィルターを通して魚や水草を見ることが癒しになるようです。

メダカでも観賞魚にするには、やはり水槽です。
ということで、「金魚元気セット 奥行きスリムS(GEX ジェックス株式会社)」というセット品が980円という値札をつけていたので買ってきました。
水槽、蓋、ろ過フィルター、エアーポンプ、エアーチューブ、ビニール製の水草模型、カルキ抜き、金魚の餌、濾過用バクテリア、 苔が生え難いという底砂(お試し用のごく少量)、お魚飼育BOOKという小冊子など金魚を飼うのに必要な物は全て入っています。
市販の金魚飼育セットの写真

水槽を洗ってから水を入れ、お試し用の底砂を敷きましたと言いたいのですが、お試し用とはいえ量が少なすぎました。
底砂を入れると魚の排泄物を無害化してくれるバクテリアの増殖に繋がるのでよいのですが、酸素消費量も増えるのでエアーポンプと濾過フィルターが必要になります。
それに、メダカは静水を好むと言っても、淀んでいる水は腐ると言いますから水草を入れないのであれば濾過フィルターを通して弱い流れをつくった方がよいです。
このセットのエアーポンプは空気の排出量が少ないので小さな水槽でもメダカが休めないほどの水流にはなっていないようですが、夜間は止めておくことにします。
空気を送らないと濾過フィルター中の有益なバクテリアに悪い影響を与えることが考えられますが、小さな濾過フィルターなので周囲から酸素を含んだ水が入り込むでしょう。
市販の金魚飼育セットの水槽にメダカを入れた写真

次は水槽に入れる水についてです。
飼育解説書などには水道水を一日汲み置いて使うか、カルキ(塩素)抜き薬剤を入れて使うように書いてありますが、私は塩素を抜いていない水道水を入れ、魚を入れる前にろ過フィルターを少なくとも一日中稼動させています。
塩素を抜いていない水道水には多少の殺菌効果が期待できます。
特に病魚で水槽をリセットしたときは塩素は抜かず、しばらくは空気を送らずに放置し、何度か水だけ入れ替えてから空気を送っています。
新しく水槽を立ち上げたときには浄化するバクテリアが殖えるまでの1ヶ月ぐらいは魚を入れないという話もありますが、水草を入れていなければ水槽の中にはバクテリアの餌になる有機物がまったく無いのでバクテリアは殖え ません。
高価な魚を入れるときには、先ずパイロットフィッシュを入れて濾過バクテリアを殖やします。
魚の排泄物に含まれるアンモニアを硝酸に変えるのが濾過バクテリアの重要な役割です。
水草を入れて光合成をさせれば硝酸は植物に吸収されますが、水草を入れていない場合には水替えをして硝酸濃度を低くする必要があります。

パイロットフィッシュにはアカヒレのような安価かつ丈夫な魚を使いますが、普通種のメダカよりアカヒレの方が高価ですからメダカ水槽には使っても意味が無いでしょう。
話はメダカからそれますが、パイロットフィッシュに使う魚は病原菌を持っていないと確信できるもので無ければなりません。
濾過バクテリアを殖やしたり水質を見るために入れるパイロットフィッシュが病原菌を水槽に持ち込んだのでは本末転倒ですから。

メダカの場合には、魚を入れずに濾過バクテリアが殖えるのを待つより、水槽立ち上げからしばらくの間は5分の1ぐらいの水量を頻繁に入れ換える方が合理的だと思います。
また、GEXのセットには生物浄化機能を早く立ち上げるためのバクテリアが付いていますが、水中に空気を送り込んでいれば自然にバクテリアが発生してくれますから水槽立ち上げ時に過密飼育をしていなければ必要ないと思います。

メダカの冬越しの方法

メダカを購入して3日目、11月なので日中と夜間の水温差が気になって熱帯魚用の水中ヒーターを入れました。
自然界のメダカは、水温が低くなると鯉や鮒などの大きな魚が生息しない水域の水底の土中に潜り込んで冬を越します。

さて、メダカ水槽にヒーターを入れても水槽のガラス面が冷たい空気にさらされていては電気代が嵩んでしまいます。そこで、シート状になった発泡スチロールで水槽の周囲を囲いました。
ガラス水槽でのメダカの冬越しの写真
前面の左右はもう少し切った方が観察しやすかったです。
水槽の上下をビニール紐で縛ってあるだけなので、夜間はビニール紐と水槽の間に発泡スチロールシートを挿し入れれば保温は万全で、ヒーターの消費電力も少なくて済みます。

冬季の熱帯魚水槽用に水槽の断熱を謳っている市販品がありますが、100円ショップやホームセンターなどで売っている汎用品を適当に切って使えば安上がりです。
見栄え を気にする方は工芸品を作るつもりで工夫すればOK。
水槽に加温用ヒーターを入れた時は必ず濾過器を動かしてください。濾過器で水を循環させないと、上だけ熱くなってしまいます。

4日目、突然、ヒメダカ1匹が☆になってしまいました。
体表面に白いものは見えませんでしたが、白点病が鰓に発症したのか、それとも、他のメダカより大きかったので寿命なのか・・・
病気の可能性もあるので、塩分濃度約0.5%になるように塩50gを入れました。
メダカは塩分に強いので助かります。

ヒーターを入れたので、10数年前に購入した水槽用の蛍光灯も載せました。
(今ならLED式でしょうけど。)
水温を上げ、明るい時間を12時間以上にすればメダカは年中産卵するそうです。ただし、寿命は短くなります。

6日目、水槽で濾過装置を使うと水流に逆らって泳ぎたがるので水槽はやめて発泡スチロール箱に戻すことにしました。
一時的でも濾過装置を止めたところではヒーターは使えないので、ヒーターの電源を切ってゆっくり室温に戻し、メダカと一緒に水槽の水を発泡スチロール箱に移しました。
濾過装置が無いと水換えが頻繁になるので面倒です。
やはりメダカは水草が植えられた睡蓮鉢や池で飼うのが適しているようです。
水草は、昼間は酸素を 放出し、メダカの排泄物から出来る硝酸を吸収してくれます。
小さな睡蓮鉢や池の中でも、暑さ寒さに強く、酸素消費量と排泄物が少ないメダカなら自然界の循環が出来て手間が掛かりません。
楊貴妃メダカやヒカリメダカのように高価な作出品種は、水流を弱めて水槽飼いですよ、もちろん。
もちろん、私にはこんな高価なメダカは怖すぎます。
それはともかく、秋から春までは子供にせがまれてもメダカを飼うのはやめた方がいいです。
水温が低いと動きが鈍くておもしろくありませんから直ぐに飽きられます。
発泡スチロール箱に移したメダカは水温12度では水底でほとんど動きません。
ヒーターを入れるならグッピーやプラティを飼った方が華やかで簡単に繁殖も楽しめます。

追補
メダカ購入から1週間目、発泡スチロール箱のメダカ 1匹が☆になりました。
1匹目と同じで大きなヒメダカ、寿命なのか寒さが影響したのか不明。
太陽が出ている日は陽だまりに出し、夜間は室内に入れています。
その後、大きなヒメダカが☆になり、購入から18日目の11月20日現在7匹になりました。

2014年2月24日
メダカを飼い始めて3ヶ月近くなりましたが、7匹は元気です。
日向に置くと、メダカが水面近くを泳ぎ出しました。
発泡スチロール箱でのメダカの冬越しの写真
(水面の反射が写って見難いですが、偏光フィルターをカメラに付ければ反射の写り込みは緩和されます)
水が4リットル位しか入らない容器なので、冬季でも1週間に1度、半分の水を入れ換えています。

2014年3月12日
3月に入っても真冬のような日が続いていましたが、ようやく春の暖かさが戻ってきました。
そして、天気の良い日中だけ日向に置いたメダカ飼育の発泡スチロール箱は、グリーンウォーターになっていました。
(メダカは7匹元気です)
青水を泳ぐメダカの写真
メダカ飼育に最適といわれるグリーンウォーターは太陽光と時間があれば簡単に作れますが、子供の頃に川で観たメダカも、こんな色の水面近くを泳いでいました。
メダカを買うような時代になってしまった現在ではメダカも ガラス水槽で飼育しなければならないような錯覚に陥ってしまいますが、メダカは、戸外で飼育し、誰もが持っている心の故郷を懐かしむものなのかも知れません。

大雪に見舞われた2014年の寒く長い冬も3月下旬になって漸く終わったようです。
そこで、少し大きな容器(70×22cm水深12cm)にメダカを移し、南側ベランダの西隅に昼夜を問わず置くことにしました。


前の飼育水を入れたので最初から薄いグリーンウォーターになっています。
グッピー水槽で殖え過ぎたマツモも入れてみましたが、温度の低い水に移した所為か、葉がいくらかバラバラになってしまいました。
その内、新芽が出てくるのを期待しています。
底に砂か赤玉土を入れる方が良いのですが、たくさん必要なのでしばらく我慢してもらいます。
気温25度、水面の半分ほどに日光が当たっているとき、 赤外線放射温度計 で測定した水面の温度は25度でした。
(写真の様にガラス板で9割がた蓋をしている状態の温度です)

4月8日、発泡スチロール箱の底が見えないほど水がグリーンになったので3分の2量ほど換水しました。
灯油ポンプ(もちろん灯油には一度も使用していないものです)で底に溜まったゴミも水と一緒に吸い上げて棄てました。
メダカ7匹は元気でしたが、マツモは加温したグッピー水槽から外に出したためか、夜間は水温が低くなるからか完全に枯れていました。

4月13日、4月の水温ではマツモは枯れてしまうので、ホテイアオイ(水玉)を一株浮かべてみました。