近づいてくる音が高くなるドップラー現象が起きる理由と、ドップラー現象の利用
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踏切で電車を待っていると、電車が近づくときには音が高く、通過後には音が低くなりますよね。
同様に、電車に乗っていると、踏切の警報音も近づくと高く聞こえ、遠ざかると低くなります。
このときの音の高低は、音の大きさでは無く周波数の高さ低さを言っています。
この音の周波数の変化を、ドップラー現象またドップラー効果と言い、他にも救急車のサイレンや動く物体の音でも感じられます。
ドップラー現象は、図を書くと容易に理解出来ます。
下図をご覧ください。
ある 時刻aに音が出ているとします。
それから少し時間がたった時刻bには、音を出しているものは、あなたの居る方向に何メート ルか近づいています。
この時に出した音は、その何メートル分だけ、時刻aに出た音に近づいているわけです。
ということは、音の速度が同じなら、音を出しているものが近づいてくる速度分だけ、音と音の間がつまるということです。それから少し時間がたった時刻 c についても同じです。
ところで、音は空気の波です。波には波長というものがあります。
上の図で波の高さが0点から次の次の0点までを1波長としていますが、任意の点を選んでも同じです。
また、波には周波数といわれるものもあります。
周波数は、1秒間に1波長を何回繰り返すかということです。
音の場合は、繰り返しが多くなる(周波数が高くなる)と高い音として聞こえます。
大きな音というのは、波の一番高い点が大きな音のことです。大きな音を高い音という表現すると間違うので要注意です。
波の速度、波長、周波数には次の関係があります。
速度 = 周波数 × 波長 ・・・・・・式(1)
話は、最初の図に戻りますが、時刻aと時刻bに出た音の間は、音を出しているものがあなたに近づく速度分だけ詰まっていると説明しました。
音と音の間が詰まっているということは、波長が短くなっているということです。
式(1)を周波数を導くように変形すると
周波数=速度 / 波長 ・・・・・・・・・式(2)
式(2)で分かりますね。
普通、空気の物理的性質が均質とみなせる狭い地域で短い時間なら音の速度は一定と考えても良いので、音と音の間が詰まる、すなわち波長が短くなると周波数が高くなるのです。
音を出しているものが、あなたから遠ざかるときには、遠ざかる速度分だけ、音と音の間が伸びるわけです。
(音が空気中を伝わるときの波は、空気の濃い部分と薄い部分の繰り返しで伝わります。これを粗密波と呼び、 水面に出来る波とは違います。)
ドップラー現象の利用
ドップラー現象は、波の性質を持つものに起きます。
ですから、音だけでなく、光、電波にもこの現象があり、警察がスピード違反を取り締まるために車の速度を測る機械(俗に言うネズミ捕りやレーダー)、 野球場で投手の投げるボールのスピードを測る機械などの他。
医療分野でも、血液の速度を測ったり、身体の内部を映像にする機械に利用されています。
また、ドップラー現象を利用して恒星が地球から遠ざかる速度を測ることが出来ますし、複数の星が1つの重心の周りを回っている分光連星を見つけるときも利用されています。
⇒ 分光連星と分光連星を見つける方法
夜が暗い理由の説明にもドップラー現象が出て来ます。
⇒ 夜が暗い理由
宇宙空間を高速で移動する人工衛星や惑星探査機などが地球の基地との連絡に使う電波もドップラー現象によって周波数が変化します。このため、電波を受信するためには受信点と人工衛星などの相対的速度に応じて受信周波数を変化させながら受信する必要があります。 比較的簡単に受信できるアメリカの気象衛星NOAAからのVHF帯を利用した画像受信でもドップラー現象があることが判ります。
⇒ 気象衛星NOAAからの画像電波を受信してみた
ただし、NOAAから送信されているVHF帯の画像信号は超広帯域FMなので画像受信には影響が少なく、信号強度の変化でドップラー現象が判ります。